印紙税~収入印紙の話~その2
- 2017/08/02
- 18:23
今回は印紙税のルーツについてのお話です。
日本では明治6年「受取諸証文印紙貼用心得方規則」が始まりとなります。明治維新以降、西欧文明が徐々に浸透していく流れの中で採用された様です。それでは印紙税を一番最初に導入した国はどこでしょうか?答えは「オランダ」です。1624年にヨハネス・ファン・デン・ブルックという税務職員の方が発明しました。なぜ、この様な税の導入が必要であったかと言いますと、単純な話ですが、国家の税収を増やしたい、その為に何か良い方法が無いか?という事です。この時期のオランダは世界史の授業でも学んだことがあると思いますが、あの有名な「八十年戦争」でとっても財政が厳しい状況に陥っておりました。
~ちょっと復習「八十年戦争」について~
キーワード
「ハプスブルク家」「フランドル地方」「カルヴァン派」「フェリペ2世」「ウェストファリア条約」「1568年」「1648年」「マウリッジ」
この用語を使って500文字程度で「八十年戦争」を説明しなさい。
って試験問題みたいになりましたが、世界史を勉強した方はいわゆる「何年戦争シリーズ」ね、と懐かしさに駆られるのではないでしょうか。
印紙税は税を徴収する側からすると結構使い勝手が良かった様で、その後あちこちの国に導入されていきます。
不動産の取引を扱っている者からしますと、収入印紙は頻繁に郵便局に買いに行くことがあります。売買契約や銀行での金銭消費貸借契約には必須となります。普通の方は領収書に200円の印紙が貼ってあるもの位はたまに見るのかも知れませんが、万単位の高額の印紙はあまりお目に掛からないと思います。我々不動産に関わる者は、お客様にお手間を掛けさせまいと、善意で代わりに郵便局で購入してきまして、契約当日に現金で精算という事を良くやります。ところが「さっき郵便局の前を通ったので買ってきましたよ。」とニコニコしながらお客様がいらっしゃることもあります。え?印紙、買ってしまったよ…。他の契約等ですぐに使う事があれば、そちらに回せば良いのですが、タイミング悪いとその印紙は塩漬けです…。昔ですが、塩漬け印紙が10万円くらいになってしまった事もあります。私が担当するコーポラティブハウスにご参加された方々は、銀行での契約の前に必ず印紙代は現金で持参下さいと案内があったかと思います。
さて、もう一つ印紙にまつわる話題です。
歴史の次はサイズ、つまり世界一大きい印紙の話です。
国税庁のホームページに面白いクイズがございます。是非、考えてみてください。
歴史上、幕末から昭和前期まで、日本の最重要な輸出品が、蚕(かいこ)から作る生糸(きいと)(シルクの原料)であったことは、よく知られています。明治時代の初期、粗悪な生糸の輸出を取り締まるため、生糸に印紙制度を導入し、検査に合格した生糸には、その証として、生糸印紙が貼用されました。生糸印紙はもちろん、大蔵省の作成・販売ですから、印紙税の一つです。生糸は、小枠(こわく)の糸車から大枠(おおわく)という大きな糸車に巻き取り、一定量にまとめてから取り外します。これを揚げ返し(あげかえし)と言い、揚げ返し後の一繰りを1単位とし、数十繰りを一定量にまとめて一束にこん包したり、さらに数束を一定量にまとめてこん包したりしましたが、そのこん包の仕方は様々でした。その生糸の梱包の仕方により、用いる生糸印紙が異なりましたが、縦169mm×横467mmもあるものは、「化粧紙印紙(けしょうがみいんし)」とも言い、その大きさから、世界一大きな印紙とも言われています。さて、世界一大きな印紙とも言われているこの「化粧紙印紙」は、生糸のこん包の仕方を示す次のうち、どれに貼用されたのでしょうか?
1 提(さげ)糸造り
・こん包の形が全体的にちょうちんの雪洞(ぼんぼり)に似ている
2 島田造り
・こん包の形が全体的に日本髪の一つ島田結いに似ている
3 鉄砲造り
・こん包の形が全体的に火縄銃の大銃に似ている
正解は…3の鉄砲造りでした!(正解者はかなりマニアックです)
時代劇や博物館などで観ることができる火縄銃は一般的には、細銃です。しかし、火縄銃には中銃、大銃の類別があり、大銃は銃座から胴体にかけて、大人が一抱えもするほど大きく、小型の大砲にも似るつくりです。大銃は、日本の火縄銃造りの発祥地で有名な滋賀県長浜市の「国友鉄砲の里資料館」で、その大きさを確認することができます。生糸の鉄砲造りは、揚げ返し後の一繰りを60繰り合わせて一束とし、さらにこれを30束合わせて大銃のようにこん包しますが、総繰り数1800、総重量は9貫目=約34kgにもなります。鉄砲造りでは当初、小さな帯状の巻紙印紙を、一繰りごとの天地にそれぞれ用いるつもりでした。そうすると、貼付する巻紙印紙は3600枚にもなる計算で、これらの貼付事務を検査場に累積される鉄砲造り全部に施すことは、あまりにも煩雑となり、印紙事務及び貿易事務の遅延につながり兼ねません。そこで、大きな「化粧紙印紙(けしょうがみいんし)」を考案し、貼付は1回で済ませるよう、相撲取りの化粧回しのように、胴体部分にぐるりと巻き付け、貼り付けることに改めました。こうした印紙貼用事務の簡素化が、世界一大きな印紙の生まれる所以となったのです。この世界一大きな印紙で使用済みのものが平成24年に租税史料として提供され、現在租税史料室にて展示されています。ご興味のある方は是非ご来室いただき、閲覧されてはいかがでしょうか。(研究調査員 鈴木 芳行)

タテ169mm、ヨコ467mm

鉄砲造り上の図のように作り上げた上に更に化粧紙を用い巻しまいのところへ会社改印をする。
記事、画像共に「国税庁ホームページ」より 「世界一大きな印紙誕生の所以」
いやぁ~本当に印紙って面白いですね!
また印紙ネタがありましたら書かせていただきます。
こうご期待ください!
日本では明治6年「受取諸証文印紙貼用心得方規則」が始まりとなります。明治維新以降、西欧文明が徐々に浸透していく流れの中で採用された様です。それでは印紙税を一番最初に導入した国はどこでしょうか?答えは「オランダ」です。1624年にヨハネス・ファン・デン・ブルックという税務職員の方が発明しました。なぜ、この様な税の導入が必要であったかと言いますと、単純な話ですが、国家の税収を増やしたい、その為に何か良い方法が無いか?という事です。この時期のオランダは世界史の授業でも学んだことがあると思いますが、あの有名な「八十年戦争」でとっても財政が厳しい状況に陥っておりました。
~ちょっと復習「八十年戦争」について~
キーワード
「ハプスブルク家」「フランドル地方」「カルヴァン派」「フェリペ2世」「ウェストファリア条約」「1568年」「1648年」「マウリッジ」
この用語を使って500文字程度で「八十年戦争」を説明しなさい。
って試験問題みたいになりましたが、世界史を勉強した方はいわゆる「何年戦争シリーズ」ね、と懐かしさに駆られるのではないでしょうか。
印紙税は税を徴収する側からすると結構使い勝手が良かった様で、その後あちこちの国に導入されていきます。
不動産の取引を扱っている者からしますと、収入印紙は頻繁に郵便局に買いに行くことがあります。売買契約や銀行での金銭消費貸借契約には必須となります。普通の方は領収書に200円の印紙が貼ってあるもの位はたまに見るのかも知れませんが、万単位の高額の印紙はあまりお目に掛からないと思います。我々不動産に関わる者は、お客様にお手間を掛けさせまいと、善意で代わりに郵便局で購入してきまして、契約当日に現金で精算という事を良くやります。ところが「さっき郵便局の前を通ったので買ってきましたよ。」とニコニコしながらお客様がいらっしゃることもあります。え?印紙、買ってしまったよ…。他の契約等ですぐに使う事があれば、そちらに回せば良いのですが、タイミング悪いとその印紙は塩漬けです…。昔ですが、塩漬け印紙が10万円くらいになってしまった事もあります。私が担当するコーポラティブハウスにご参加された方々は、銀行での契約の前に必ず印紙代は現金で持参下さいと案内があったかと思います。
さて、もう一つ印紙にまつわる話題です。
歴史の次はサイズ、つまり世界一大きい印紙の話です。
国税庁のホームページに面白いクイズがございます。是非、考えてみてください。
歴史上、幕末から昭和前期まで、日本の最重要な輸出品が、蚕(かいこ)から作る生糸(きいと)(シルクの原料)であったことは、よく知られています。明治時代の初期、粗悪な生糸の輸出を取り締まるため、生糸に印紙制度を導入し、検査に合格した生糸には、その証として、生糸印紙が貼用されました。生糸印紙はもちろん、大蔵省の作成・販売ですから、印紙税の一つです。生糸は、小枠(こわく)の糸車から大枠(おおわく)という大きな糸車に巻き取り、一定量にまとめてから取り外します。これを揚げ返し(あげかえし)と言い、揚げ返し後の一繰りを1単位とし、数十繰りを一定量にまとめて一束にこん包したり、さらに数束を一定量にまとめてこん包したりしましたが、そのこん包の仕方は様々でした。その生糸の梱包の仕方により、用いる生糸印紙が異なりましたが、縦169mm×横467mmもあるものは、「化粧紙印紙(けしょうがみいんし)」とも言い、その大きさから、世界一大きな印紙とも言われています。さて、世界一大きな印紙とも言われているこの「化粧紙印紙」は、生糸のこん包の仕方を示す次のうち、どれに貼用されたのでしょうか?
1 提(さげ)糸造り
・こん包の形が全体的にちょうちんの雪洞(ぼんぼり)に似ている
2 島田造り
・こん包の形が全体的に日本髪の一つ島田結いに似ている
3 鉄砲造り
・こん包の形が全体的に火縄銃の大銃に似ている
正解は…3の鉄砲造りでした!(正解者はかなりマニアックです)
時代劇や博物館などで観ることができる火縄銃は一般的には、細銃です。しかし、火縄銃には中銃、大銃の類別があり、大銃は銃座から胴体にかけて、大人が一抱えもするほど大きく、小型の大砲にも似るつくりです。大銃は、日本の火縄銃造りの発祥地で有名な滋賀県長浜市の「国友鉄砲の里資料館」で、その大きさを確認することができます。生糸の鉄砲造りは、揚げ返し後の一繰りを60繰り合わせて一束とし、さらにこれを30束合わせて大銃のようにこん包しますが、総繰り数1800、総重量は9貫目=約34kgにもなります。鉄砲造りでは当初、小さな帯状の巻紙印紙を、一繰りごとの天地にそれぞれ用いるつもりでした。そうすると、貼付する巻紙印紙は3600枚にもなる計算で、これらの貼付事務を検査場に累積される鉄砲造り全部に施すことは、あまりにも煩雑となり、印紙事務及び貿易事務の遅延につながり兼ねません。そこで、大きな「化粧紙印紙(けしょうがみいんし)」を考案し、貼付は1回で済ませるよう、相撲取りの化粧回しのように、胴体部分にぐるりと巻き付け、貼り付けることに改めました。こうした印紙貼用事務の簡素化が、世界一大きな印紙の生まれる所以となったのです。この世界一大きな印紙で使用済みのものが平成24年に租税史料として提供され、現在租税史料室にて展示されています。ご興味のある方は是非ご来室いただき、閲覧されてはいかがでしょうか。(研究調査員 鈴木 芳行)

タテ169mm、ヨコ467mm

鉄砲造り上の図のように作り上げた上に更に化粧紙を用い巻しまいのところへ会社改印をする。
記事、画像共に「国税庁ホームページ」より 「世界一大きな印紙誕生の所以」
いやぁ~本当に印紙って面白いですね!
また印紙ネタがありましたら書かせていただきます。
こうご期待ください!